もし故人に多額の借金があることが判明した場合、葬儀手続きと並行して「相続放棄」を検討しなければなりません。相続放棄は「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きを行う必要があります。この3ヶ月という期間は、葬儀や初七日の法要をしている間にあっという間に過ぎ去ってしまいます。注意すべき最大の落とし穴は、不用意に故人の財産に手をつけてしまうことです。例えば、故人の口座からお金を引き出して自分のために使ったり、遺品の中から高価な貴金属を持ち帰って売却したりすると「法定単純承認」とみなされ、相続を承認したことになってしまいます。そうなると、後から多額の借金が見つかっても、もう相続放棄の手続きは受理されません。葬儀費用についても注意が必要です。故人の預金から葬儀費用を支払うことは、社会的に妥当な範囲内であれば認められる傾向にありますが、あまりに豪華すぎる葬儀は「財産の処分」とみなされるリスクがあります。不安な場合は、遺族の持ち出しで葬儀を行い、故人の財産には一切触れないまま手続きを進めるのが最も安全です。最近では当日返しも一般的ですが、高額の香典をいただいた方には改めて個別に用意する必要があります。次に、四十九日の法要に向けた準備です。親族への案内、お寺との日程調整、会食の会場予約、位牌の作成など、1ヶ月ほどの期間でこなさなければなりません。特に白木の位牌から本位牌への作り替えは、仏壇店での制作に2週間程度かかるため、早めの注文手続きが欠かせません。また、お墓がない場合は、霊園探しや樹木葬、散骨といった納骨先の選定も急ぐ必要があります。納骨時には石材店に依頼して墓石に戒名を彫る手続きも発生します。これらと並行して、相続財産の調査と分割協議を進めます。また、形見分けについても、経済的価値があるものを分配すると単純承認とみなされる恐れがあるため、相続放棄を決めるまでは保留にしておく手続きが賢明です。借金の有無がはっきりしない場合は、全国銀行協会や信用情報機関に情報の開示を求める手続きを最初に行いましょう。相続放棄の手続き自体は、各相続人が単独で行えますが、自分が放棄することで次の順位の相続人(兄弟姉妹など)に借金が引き継がれてしまうため、事前に親族に事情を説明しておくマナーも重要です。負の遺産から家族を守るための決断も、大切な葬儀手続きの一部です。専門家と相談しながら、慎重かつ迅速に進めていきましょう。
相続放棄を検討する場合の葬儀手続きにおける注意点