長年、葬儀社の担当者として数多くの式典に立ち会ってきましたが、参列者の皆様の身だしなみの中で、実は時計が全体の印象を左右することが多々あります。特にお焼香や受付、あるいは最後のお別れの場面では、手元が注目の的になります。よくある失敗例として挙げられるのは、時計の「音」と「光」です。最近のデジタル時計やスマートウォッチは、通知音やアラーム音が不意に鳴り響くリスクがあります。お経が流れる静寂の中で、電子音が鳴り響くのは、遺族の方々にとっても非常にショックな出来事になりかねません。また、腕を動かした瞬間に文字盤が明るく発光する機能も、暗い式場内では非常に目立ち、集中を削ぐ要因となります。専門家の視点からアドバイスをさせていただくなら、葬儀に着用する時計は「アナログの薄型」に限ります。なぜ薄型が良いのかというと、喪服の袖口にスムーズに収まり、不必要に露出することを防げるからです。厚みのあるスポーツウォッチは袖を押し上げてしまい、常に存在を主張してしまいます。また、文字盤の色についても、実は白よりも黒やダークネイビーの方が、喪服の黒と馴染みが良く、目立ちにくいという特徴があります。金属ベルトについても、シルバーであれば問題ないという風潮がありますが、実際にはリンクの隙間に汚れが溜まっていたり、傷で光が乱反射したりするものは、清潔感を損なうため避けるべきです。理想は、やはり黒のスムースレザーベルトです。もし、適切な時計をお持ちでないのであれば、葬儀の間だけは時計を外してカバンの中にしまっておくことを強くお勧めします。今はスマートフォンがありますから、時刻確認に困ることはありません。無理に不適切な時計をつけて参列するよりも、手首を何もない状態にしておく方が、潔く、かつ敬意が伝わる装いになることもあります。私たちは、故人と遺族の最後の時間を守るのが仕事です。参列者の皆様にも、1枚の布、1つの小物に至るまで、その場にふさわしい配慮をしていただけることを願っております。
葬儀の専門家が語る時計選びの注意点