近年増えている家族葬や密葬では、参列者を限定し、故人と近しい方々のみで執り行うケースが多く見られます。このような小規模な葬儀の場合、御供物や香典を辞退される遺族も少なくありません。もし遺族から御供物を辞退する意向が示されている場合は、無理に贈ることはかえって先方の負担となる可能性があるため、その意向を尊重するのが最も大切なマナーです。弔電を送ったり、後日改めて弔問に伺ったりするなど、別の方法で弔意を伝えるようにしましょう。では、もし御供物の辞退の申し出がなかった場合や、どうしても弔意を表したい場合に御供物を贈る際は、どのようなのし紙を選べば良いのでしょうか。家族葬や密葬であっても、御供物にかけるのしの基本的なマナーは変わりません。水引は黒白または黄白の結び切りを用い、表書きは四十九日前であれば「御霊前」、以降であれば「御仏前」とします。宗派によっては最初から「御仏前」とする場合もあります。水引の下には、贈り主のフルネームを記載します。ただし、小規模な葬儀だからといって、御供物を贈る場合でも品物のサイズや金額については、通常の葬儀と同様に考えるのが一般的です。あまりに高額な品物は、遺族にお返しの負担をかけてしまう可能性があります。三千円から一万円程度を目安に、日持ちのするお菓子や果物、線香などが適しています。最も重要なのは、御供物を贈る前に遺族の意向を確認することです。御供物を辞退されているにも関わらず贈ってしまうと、マナー違反となるだけでなく、遺族の悲しみに寄り添えていない印象を与えてしまう可能性もあります。事前に確認が難しい場合は、御供物は控えるか、非常に控えめな品物を選ぶ方が無難かもしれません。家族葬や密葬においては、形式よりも故人を偲び、遺族に寄り添う気持ちが大切にされます。御供物にかけるのしも、その心遣いを伝えるための一つの手段です。遺族の負担にならないよう配慮しつつ、適切なマナーで弔意を表しましょう。