現代の葬儀手続きにおいて、最も新しく、かつ困難な課題となっているのが「デジタル遺品」の処理ですあると言えるでしょう。かつての葬儀手続きといえば、目に見える書類や通帳を整理すれば事足りていましたが、今はスマートフォンやパソコンの中に大切な情報が隠されています。ネット銀行の口座や証券会社のマイページ、暗号資産のウォレットなどは、郵送物が届かない設定になっていることが多く、家族がその存在すら知らないケースが多発しています。これらのデジタル資産を見落としたまま葬儀手続きを進めてしまうと、後に多額の相続税が発生したり、逆に貴重な遺産を放置することになったりします。また、有料のサブスクリプションサービスや月額課金のアプリも盲点です。クレジットカードの支払いを止めたとしても、サービス自体が解約されない限り、延滞料金が発生したり、家族のカードに請求が引き継がれたりするトラブルもあります。さらに、SNSアカウントの取り扱いも慎重に行う必要があります。故人のアカウントをそのままにしておくと、誕生日に通知が届き続け、遺族を悲しませることがあります。多くのSNSでは、追悼アカウントへの移行や、遺族による削除依頼を受け付けていますが、これにも死亡診断書の写しなどの公的な証明書類が必要です。デジタル遺品の整理をスムーズに進めるための最大の壁は、パスワードです。ロックがかかったスマートフォンを業者に頼んで解除するには数万円の費用がかかることもあります。このような事態を避けるためには、生前からラストパスのようなパスワード管理ツールを利用したり、家族にだけは解除方法を伝えておいたりするなどの対策が不可欠です。葬儀手続きのチェックリストには、今や「デジタルの整理」を最上位に置くべき時代が来ています。アナログな手続きとデジタルな手続きを並行して進めることで、初めて故人の人生を完全に整理し、次のステップへ進むことができるのです。