香典返しを贈る際、品物以上に大切なのが、そこに添える「挨拶状(お礼状)」です。この一枚の書状は、単なる送り状ではなく、葬儀に際してお世話になったことへの感謝と、忌明けを無事に迎えたことの報告を伝える、非常に重要な役割を担っています。挨拶状には、守るべきいくつかの伝統的な書き方のルールがあります。まず、最も特徴的なのが、文章中に「句読点(、や。)」を用いない、という慣習です。これには、「葬儀や法要が、滞りなく、途切れることなく流れるように進みますように」という願いが込められているとされています。また、筆や筆ペンを使い、縦書きで書くのが正式な形式です。時候の挨拶(「拝啓 〇〇の候〜」など)は省略し、すぐに本題から書き始めます。文章の構成としては、まず、故人の俗名を記し、「亡父 〇〇 儀」といった形で始めます。「儀」は、「〜のこと」という意味の謙譲語です。次に、葬儀に際してご多忙の中、会葬いただいたこと、そして香典を賜ったことへの心からの感謝を述べます。続いて、「おかげさまで、〇月〇日に四十九日(または満中陰)の法要を滞りなく相営みました」と、忌明けの報告を記します。そして、「つきましては、供養のしるしまでに、心ばかりの品をお届けいたしましたので、何卒ご受納くださいますようお願い申し上げます」と、香典返しを送った旨を伝えます。最後に、本来であれば直接お伺いして御礼を申し上げるべきところを、書中にて失礼することへのお詫びを述べ、「敬具」で締めくくります。日付は、法要を終えた日付を記し、差出人として喪主の氏名と、親族一同の意向であることを示すために「親族一同」と書き添えます。宗教・宗派によって使う言葉が異なる場合(神式では「五十日祭」、キリスト教では「召天記念」など)があるため、事前に確認が必要です。この丁寧な挨拶状こそが、あなたの感謝の気持ちを最も深く伝えてくれるのです。