葬儀における最も重要な儀式の一つである「焼香」。この焼香を行う順番もまた、座席の順序と深く関連しています。焼香の順番は、座席の序列と同様に、「故人様との関係性が深い順」というのが絶対的な原則です.まず最初に焼香を行うのは、喪主です。ご遺族の代表として、最初に故人様に香を捧げます。次に、喪主に続いて、最前列に座っているご遺族・ご親族が、席順に従って焼香台へと進みます。つまり、故人様の配偶者、子、孫、両親、兄弟姉妹といったように、祭壇に近い上座に座っている人から順番に行うのが通例です。ご親族の焼香が一通り終わると、次に一般参列者(弔問客)の焼香が始まります。この際も、一般参列者席の最前列に座っている方、すなわち弔辞を読んだ方や会社の上司といった主要な立場の方から順番に案内されます。その後、二列目、三列目と、前方の席に座っている人から順番に焼香を行うのが一般的な流れです。このように、焼香の順番は、座席の順序と連動しており、そのどちらもが故人様との関係性の深さを示しているのです。葬儀の規模が大きい場合や、会場のレイアウトによっては、効率的に焼香を進めるために、葬儀社のスタッフが列ごとに案内したり、「回し焼香」といって、香炉を隣の人に回していく形式が取られたりすることもあります。どのような形式であれ、自分の順番が来るまでは、静かに席で待ち、前の人の作法を参考にしながら、心を整えておきましょう。自分の順番が来たら、まず祭壇手前でご遺族に一礼し、その後、祭壇に進んで焼香を行います。焼香を終えたら、再びご遺族に一礼してから、自席に戻ります。この一連の流れるような動き全体が、故人への弔いの一部です。座席の位置は、自分がいつ焼香を行うべきかの目安となる、重要な指標なのです。