ご遺族への配慮から、香典を渡す際に「お返しはご不要です」と、香典返しを辞退する意思を伝えられる方がいらっしゃいます。また、ご遺族側が、葬儀の案内状などで「香典返しは一律にご辞退申し上げます」と表明するケースも増えています。このような場合、その言葉をどのように受け止め、どう対応するのが最も適切なのでしょうか。結論から言えば、相手が辞退の意思を明確に示している場合は、その気持ちをありがたく受け止め、無理に香典返しを贈らないのがマナーです。相手の「負担をかけたくない」という思いやりを無にしてしまうことになるからです。特に、一家の働き手を亡くされたご遺族や、幼いお子様がいるご家庭に対して、少額の香典を渡す際に「残されたご家族のために役立ててください」という思いを込めて、辞退を申し出るケースが多く見られます。このような温かい心遣いに対しては、品物をお返しするのではなく、別の形で感謝の気持ちを伝えることが大切です。最も丁寧な方法は、忌明けの時期に合わせて、心のこもった「お礼状」を送ることです。お礼状には、香典をいただいたことへの感謝と共に、「お心遣いに甘えさせていただき、お返しは控えさせていただきますが、故人に代わりまして厚く御礼申し上げます」といった一文を加え、相手の配慮に感謝している旨を明確に伝えます。品物がない分、言葉を尽くして感謝を伝えることが重要です。また、お中元やお歳暮といった、季節の挨拶の際に、少し上質な品を贈るという形で、さりげなく感謝を示すのも良い方法です。あるいは、親しい間柄であれば、後日改めてお会いした際に、「あの時は本当にありがとうございました」と、直接言葉で伝えるだけでも、その気持ちは十分に伝わります。香典返しは、感謝を伝えるための一つの手段に過ぎません。相手の心遣いを尊重し、その気持ちに誠実に応えること。それが、人と人との温かい関係を築いていく上で、何よりも大切なことなのです。
香典返しは不要です、と言われたら