香典返しの品物選びには、独特のルールと込められた意味があります。その根底にあるのは、「不祝儀を後に残さない」という考え方です。悲しみを引きずらず、きれいさっぱりと洗い流す、という意味合いから、使ったり食べたりすればなくなる「消え物」を選ぶのが、古くからの伝統であり、現在でも主流となっています。その代表格が「お茶」や「海苔」です。これらは、日持ちがし、どこの家庭でも使う機会が多いため、古くから定番の品として選ばれてきました。また、悲しみを「洗い流す」という意味合いで、石鹸や洗剤、入浴剤といった日用品も人気があります。最近では、故人への哀悼の意と感謝を込めて、白いタオルもよく選ばれます。タオルは、悲しみを「包み込む」「拭い去る」といった意味合いに繋がるとされています。食べ物では、日持ちのする焼き菓子やおかき、そうめんなどが定番です。砂糖も、悲しみを和らげるという意味合いで、古くから用いられてきました。一方で、香典返しにはふさわしくないとされる品物もあります。例えば、肉や魚といった「四つ足生臭もの」は、殺生を連想させるため、仏事の贈り物としてはタブーとされています。また、お酒や昆布、鰹節といった、お祝い事を連想させる品物(いわゆる縁起物)も避けるのが一般的です。しかし、近年、品物選びの傾向は少しずつ変化しています。相手のライフスタイルや好みが多様化する中で、最も喜ばれる選択肢として急速に普及しているのが「カタログギフト」です。カタログギフトであれば、受け取った側が自分の好きなもの、必要なものを自由に選ぶことができるため、「贈ったものが相手の趣味に合わなかったらどうしよう」という贈り主の不安を解消してくれます。また、香典の金額に応じて、カタログのランクを変えることで、贈り分けがしやすいという実務的なメリットもあります。伝統的な意味合いを大切にしつつも、相手への配慮を最優先に考える。それが、現代の香典返し選びの基本的なスタンスと言えるでしょう。