香典返しを準備する上で、ご遺族が最も悩むのが、その金額の相場ではないでしょうか。一般的に、香典返しの金額の目安は、いただいた香典の額の「半返し(はんがえし)」、すなわち半額程度が基本とされています。例えば、1万円の香典をいただいた場合は、5,000円程度の品物をお返しするのが通例です。地域によっては、「三分の一返し」が慣習となっている場合もありますので、不安な場合は地域の慣習に詳しい葬儀社や、親族の年長者に相談してみると良いでしょう。この「半返し」という考え方は、香典がご遺族への扶助という意味合いも持つため、全額をお返しするのではなく、ご厚意の半分はありがたく頂戴するという、謙譲の美徳から来ています。ただし、このルールは全てのケースに厳格に適用されるわけではありません。いくつかの注意点と配慮が必要です。まず、高額の香典をいただいた場合です。例えば、親族から10万円といった高額の香典をいただいた際に、きっちり半額の5万円の品物をお返しすると、かえって相手に気を遣わせてしまうことがあります。このような場合は、三分の一から四分の一程度の品物をお返しし、その分、法要の席で手厚くおもてなしをしたり、折に触れて感謝の気持ちを伝えたりする方が、より心のこもった対応となるでしょう。逆に、会社の部署一同など、連名で香典をいただき、一人当たりの金額が少額になる場合は、必ずしも個別に半返しをする必要はありません。その場合は、休憩室で皆で分けられるようなお菓子の詰め合わせなどを一つの品物としてお返しするのが一般的です。また、香典返しは不要、という意思表示をされた方や、社会福祉法人などに寄付をする「香典寄付」を選ばれたご遺族の場合は、香典返しは不要ですが、その代わりとして、丁重な礼状を送ることが大切です。相場はあくまで目安。大切なのは、いただいたご厚志に対して、誠心誠意、感謝の気持ちを形にすることなのです。