遺族・親族席の具体的な座り方
葬儀会場において、祭壇に向かって右側に設けられるのが、喪主をはじめとするご遺族・ご親族のための席です。このエリアの席順は、故人様との関係性の深さを明確に示す、非常に重要な意味を持っています。その序列は、故人様を中心とした家族の絆と秩序を、参列者に対して無言のうちに伝える役割を担っています。まず、最前列の、祭壇に最も近く、中央の通路に面した席が、この葬儀の主催者である「喪主」の席となります。喪主は、ご遺族の代表として、参列者からの弔意を受け、挨拶を行うという重責を担うため、最も上座であるこの位置に座ります。喪主の隣(通路から見て奥側)には、故人様の配偶者が座るのが一般的です。もし喪主が故人の配偶者である場合は、その隣には故人の長男、長女といったように、血縁の濃い順に子が並びます。最前列には、故人様と最も近しい家族、すなわち配偶者、子、孫までが座ることが多いようです。二列目以降は、故人様の両親、兄弟姉妹とその配偶者、そして故人様から見て、おじ・おば、いとこ、甥・姪といったように、血縁関係の遠い順に、後ろの列、そして通路から遠い席へと座っていきます。この際、同じ関係性の親族の中でも、年長者を上座にするなどの配慮がなされることもあります。この席順は、葬儀社が事前に家族構成をヒアリングし、席次表を作成して案内してくれることがほとんどですが、最終的には喪主や親族の代表者が確認し、決定します。もし、どの席に座ればよいか迷った場合は、勝手に判断して座るのではなく、必ず葬儀社のスタッフや、親族の世話役の方に尋ねるようにしましょう。この厳格に見える席順は、故人様を中心とした家族の最後の共同作業であり、故人が築き上げた家族という輪郭を、社会に対して示すための、静かで荘厳な儀式の一部なのです。