葬儀会場に到着した一般参列者(弔問客)は、受付と焼香を済ませた後、係員から席へと案内されます。この時、案内される席は、通常、祭壇に向かって左側のエリアです。ご遺族・ご親族が右側に座るのとは対照的に、故人と社会的な繋がりを持っていた人々が座る場所として区別されています。この一般参列者席においても、故人様との関係性に応じた、暗黙の席順が存在します。まず、最前列の中央通路側に最も近い席が、一般参列者の中での最上座となります。この席には、弔辞を読む方や、故人が勤務していた会社の代表者、あるいは特に親しかった友人代表といった、一般参列者の中での主要な立場の方が座るのが一般的です。そこから後方の席に向かって、会社関係者、友人・知人、そして近隣の方々といった順に座っていきます。会社関係者の中でも、役職の高い方から順に前方の席に座るのがマナーとされています。しかし、実際の葬儀の場では、ご遺族側が全ての参列者の関係性を把握し、厳密に席を指定することは困難です。そのため、多くの場合は、葬儀社のスタッフが「前から順番にお詰めください」と案内するに留まります。このような場合、参列者としては、どのような心構えで席を選べば良いのでしょうか。まず、むやみに後方の席に座ろうとせず、案内された通りに前方の空いている席から詰めて座るのが基本的なマナーです。後から来た人が座りやすいように配慮する、という日本人らしい思いやりがここでも求められます。また、自分よりも故人と関係が深いと思われる方(例えば、明らかに年配の親しいご友人など)が後から来た場合は、そっと席を譲るなどの配慮ができると、より丁寧な印象を与えます。ただし、葬儀の形式や会場の規模によっては、席が指定されている場合もありますので、その際は必ず係員の指示に従いましょう。大切なのは、故人を敬う気持ちを忘れず、周囲への配慮をしながら、静かに儀式の開始を待つことです。