葬儀やお通夜に参列する際、香典袋の表書きに故人の名前を書くべきか、書かなくても良いのか、また、書くとしたら俗名と戒名のどちらを書くべきか、迷った経験のある方は少なくないでしょう。これは、細かな部分ですが、ご遺族への配慮を示す上で知っておきたいマナーの一つです。まず、基本的なルールとして、香典袋の表書き(「御霊前」や「御香典」と書かれた下)に、故人の名前を記載する必要は必ずしもありません。受付では、誰の葬儀かを把握しているため、自分の名前が書かれていれば、誰からの香典かは明確に分かるからです。しかし、同日に同じ斎場で複数の葬儀が執り行われている場合や、大規模な葬儀で受付が複数ある場合など、ご遺族や受付係の混乱を避けるために、故人の名前を書き添えるのがより親切な対応と言えます。では、名前を書き添える場合、俗名と戒名のどちらを書くべきでしょうか。この答えは明確で、必ず「俗名」を書くようにします。理由は、受付を担当する方や、後で香典を整理するご遺族にとって、最も分かりやすく、馴染みのある名前が俗名だからです。戒名は、葬儀の場で初めて知る名前であり、漢字も難解なことが多いため、戒名で書かれてしまうと、誰からの香典なのかを照合するのに手間取らせてしまう可能性があります。名前を書き添える際の位置は、表書きの中央下部に自分の名前を書き、その左横に、少し小さな文字で「(故)〇〇様」または「〇〇様御霊前」といった形で故人の俗名をフルネームで記すのが一般的です。特に、会社の同僚など、ご遺族が自分のことを知らない可能性が高い場合に、故人の名前を書き添えておくと、「故〇〇の会社の者です」という関係性が明確になり、より丁寧な印象を与えます。ご遺族の立場に立ち、どうすれば負担をかけずに済むかを考える。その小さな心遣いが、香典袋の書き方にも表れるのです。